きっかけは「回数券の期限切れ」だった
3年前に移転した際に作った回数券が、そろそろなくなりかけている。それならこの機会に新調しようと思い立ったのだが、ここで3日ほど悩むことになった。
いざ発注しようと思ったら、3年前まで頼んでいた印刷業者さんがいなくなっていたのだ。昔は近所に印刷屋さんが何軒もあって、頼めば形にしてくれた。名刺屋さんもあちこちにあった。ところがこの3年ほどの間に、そういうお店は軒並み姿を消し、代わりにネット印刷が主流になっていた。
ネットで探すと、6枚つづりの回数券テンプレートなどは確かにある。しかしとにかく分かりにくい。Wordで作るのか、Affinityで作るのか、Illustratorで作るのか、PowerPointで作るのか——まずソフトを選ばされ、選ぶとダウンロードされてくるのは真っ白なテンプレートファイルだけ。そこから先は結局自分でデザインしなければならない。
料金体系も一癖あって、納期を1週間ほど余裕を持たせると6割引き程度になり、100枚で1万2千円前後。逆に3日以内の急ぎだと2万円近くまで跳ね上がる。時間に余裕があったので、100〜200枚単位で頼もうかと考えていたのだが、そもそも「白紙から自分でデザインする」という工程がネックだった。
AIにラフを作らせてみたら、あっさり解決した
ここでAIを使えるのではと思いつき、次のものをアップロードしてみた。
- ネット印刷でダウンロードした白紙の回数券テンプレート
- 自院のロゴ
- 現在使っている回数券
これらを素材に「回数券のデザイン案を考えてほしい」と依頼したところ、ラフスケッチがすぐに出てきた。これがなかなか良い出来で、そこから色を指定し、文字のフォントを指定し、微調整を重ねて最終案が完成。今日、これを発注する予定だ。
長年悩んでいた「デザインをどう作るか」という壁が、素材を渡すだけであっさり片付いてしまった。印刷業者が減り、デザイナーも身近にいなくなった一人治療院にとって、AIは実質的な「事務局」の代わりになってくれる。
そもそも回数券は必要か——価格と運用の変遷
一人治療院に回数券は本当に必要か、という点は正直迷うところではある。ただ、うちの場合は実際に効果があった。
通常1時間7,000円のところ、回数券で3回分をまとめて1000円近くやすくなる。消費税なども考えると、この割引幅は患者さんにとって決して小さくなく、実際によく購入してもらえている。
ただし運用面では過去に失敗もした。当初は「30分券」は「1時間券」を前提にイメージし作ったのだが、実際には30分で使う人もいてもいて、券の単位と利用目的がずれてしまった。最初のうちは文句も言わず対応していたが、これでは券の意味が薄れてしまう。
さらに大きな問題は利用頻度だった。週1〜2回来てくれる方なら回数券は理にかなっているが、数か月に1回しか来ない方に「回数券」を売っても、実質的な意味がない。
数ヶ月に1回で利用する方もいて、これはちょっと違うぞと思った
そこで移転を機にスタイルを変更した。
- 使用期限を3か月に設定
- 1回の施術は1時間以上のみ対象
これにより、頻繁に通えない方は、短い時間は4,400円という形で納得してもらった。
20年で変わった環境、そして単価設定の背景
この場所で開業して20年近くになるが、その間に治療院を取り巻く環境は大きく変わった。
22〜23年前、開業した当初はクイックマッサージが非常に流行っており、「普通のあん摩・指圧・マッサージは潰れるぞ」とまで言われていた時期だった。そこで「もっと効果的な施術ができる」という差別化を狙い、単価を少し高めに設定し、整体的な要素を取り入れた形で売り出したのが始まりだった。
ところが蓋を開けてみると、短時間の施術を求める人は少なく、逆に45分・60分・90分といった、通常のあん摩・指圧・マッサージに近い時間帯を求める人が中心になっていった。結果としてそちら側にスライドしていったのだが、問題は「短時間メニュー」がそのまま残ってしまったことだった。利用者は23年の今現在でもまだいるいらっしゃる。むやみに廃止することはできないが、メニューには消えてもらった。この構造のまま今回の移転を迎え、料金・回数券の設計を大きく見直すことになった。
3年前の移転の時点ではまだ印刷業者に頼めていたが、その後のわずか数年でさらに状況は変わり、周囲の印刷業者はほぼいなくなってしまった。デザインから発注まで、実質的に自分一人でこなさなければならない環境になっていたわけだ。今回のように、AIに素材を渡すだけでラフデザインまで作ってもらえるのは、一人治療院にとって心強い。まさに「もう一人スタッフがいる」ような感覚だ。



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