治療院の予約は電話からWebへ|ひとり治療院で受付方法を変えてきた30年
治療院を長くやっていると、予約や問い合わせの方法もずいぶん変わったと感じます。
最初はもちろん電話が中心でした。電話に出られなければ留守番電話。その後LINEが登場し、さらにWeb予約を導入しました。そして最近では、なんとInstagramの音声メッセージで連絡してくる方までいます。
治療院の受付というと、予約システムや業務効率化の話になりがちですが、ひとり治療院の場合はもう少し切実です。
施術中に電話が鳴っても、出られないことがある。
だからこそ私は、電話をなくすのではなく、その時代に合わせて「患者さんが連絡できる入口」を少しずつ増やしてきました。
最初に教わったのは「電話受付も技術」ということ
開業する前、最初にお世話になった治療院の奥さんが、電話受付のとても上手な方でした。
何が上手だったのか。
一つは、患者さんの名前と声を一致させて覚えていることでした。
電話がかかってきたとき、声を聞いて相手が誰なのか分かる。そして自然に名前を呼んで応対する。
電話した側からすると、「自分のことを覚えてくれているんだ」と感じます。ほんの小さなことですが、これだけでも治療院に対する親近感はかなり違うと思います。
もちろん曖昧なときに無理に名前を当てる必要はありません。しかし、いつも来てくださる患者さんの声や話し方を覚えておくことは、立派な接遇の一つです。
もう一つ大切なのが、初めて電話してきた人の話をよく聞くことです。
治療院に初めて電話する人は、それなりに緊張していることがあります。
「こういう症状でも診てもらえますか」
「初めてなんですが大丈夫ですか」
「今日空いていますか」
電話を取った瞬間が、その治療院との最初の接点です。
私はこれは、ある程度トレーニングしてもいいものだと思っています。スタッフがいる治療院であれば、実際に患者役と受付役に分かれて、何度も電話応対を練習してもいいでしょう。
治療院の第一印象は、玄関に入ってきたときではなく、最初の電話ですでに始まっている。
当時教わったことを振り返ると、そう感じます。
ただし、ひとり治療院では施術中に電話へ出られない
電話は大切です。
本当は鳴ったら出た方がいい。
新規の患者さんかもしれませんし、予約変更の連絡かもしれません。
しかし、ひとりで治療院をやっていると、どうしても電話に出られない時間があります。
特に問題なのが施術中です。
一度くらいなら、「すみません、電話だけ失礼します」と患者さんに断って出ることもできます。
しかし、それが二度、三度となれば話は違います。
患者さんは自分の時間を使い、お金を払って施術を受けています。その途中で何度も施術を止められれば、決して気分のいいものではありません。
電話の向こうにいる患者さんを大切にするあまり、目の前にいる患者さんをないがしろにしてはいけない。
これは、ひとり治療院では知っておいた方がいいことだと思います。
そこで重要になるのが留守番電話
施術中に電話へ出られない以上、最初に頼ったのが留守番電話でした。
ただし、単に「ただいま電話に出られません」だけでは不十分です。
例えば私は、次に何をしてほしいのかが分かるような案内を入れるようにしました。
「ただいま施術中のため電話に出ることができません。ご予約、お問い合わせの方は、お名前とお電話番号、ご用件をお話しください。後ほどこちらからご連絡いたします」
こんな内容です。
用事のない人はメッセージを残しません。しかし、本当に予約したい人であれば名前と電話番号を残してくれます。
こちらは施術が終わってから折り返せばいい。
つまり留守番電話は、単なる「不在のお知らせ」ではありません。
自分が電話に出られない時間帯に代わりに受付をしてくれる仕組みとして考えた方がいいと思います。
「LINEで予約する人なんているの?」と半信半疑だった
その次に導入したのがLINEです。
当時、LINEを使って予約を受け付けている同業者がいました。
正直なところ、最初は疑っていました。
「治療院の予約をLINEでする人なんているのかな?」
そこでその先生に聞いてみたところ、
「いや、結構いるよ」
と言うのです。
それなら試してみようと半信半疑で始めたところ、本当にLINEから問い合わせが来ました。
最初に来たときは驚いたのを覚えています。
その後、LINEで予約する人は徐々に増えていきました。
LINEは電話とWeb予約の中間にある
LINEの良いところは、患者さんとチャットでやり取りできることです。
「今日の何時が空いていますか?」
「今から行っても大丈夫ですか?」
「○曜日に予約できますか?」
こういったやり取りには非常に向いています。
現在はLINE公式アカウントのメニューなども使いながら、予約や問い合わせへ進みやすいようにしています。以前は自分で一件ずつチャット対応していましたが、今ではAIも使いながら、ボタンを押せば必要な案内へ進めるような形も作っています。
ただし、LINEにはLINEなりの問題もあります。
LINEで連絡する人は、電話ほどではないにしても、比較的早い返事を期待しているように感じます。
「今から行っていいですか」と聞かれて、数時間後に返事をしても意味がありません。
つまりLINEを導入したからといって、受付業務が全部なくなるわけではありません。
電話のように施術を中断して出る必要はないけれど、ある程度リアルタイムの対応は求められる。
電話とWeb予約の中間にあるのがLINEなのだと思います。
都心では一時期、半分くらいがLINE予約になった
LINE予約を始めてから、私の治療院では一時期、予約の半分くらいがLINEになった記憶があります。
電話中心だった時代から考えると、かなり大きな変化でした。
しかし、その後さらに大きく変わります。
Web予約を導入したからです。
Web予約は最初、ドタキャンが心配だった
Web予約を入れるときにも抵抗がありました。
簡単に予約できるということは、簡単にキャンセルされるのではないか。
予約だけ入れて来ない人が増えるのではないか。
そんな心配もありました。
ところが実際に運用してみると、私の治療院ではWeb予約による無断キャンセルはほとんどありませんでした。
これはあくまで私の治療院での経験ですが、むしろ電話予約の方がキャンセルや無断キャンセルが多いような印象すらあります。
Web予約だから無責任な予約が増える、という私の予想は外れました。
Web予約が一番増えた理由は、患者さんにも便利だから
Web予約を導入すると、やがて予約方法の中心がWebへ移っていきました。
現在ではおおむね、
- Web予約
- LINE
- 電話
という順番になっています。
なぜWeb予約がこれほど増えたのか。
こちら側から見ると「電話対応が減って助かる」というメリットがあります。
しかし、それ以上に患者さん側にも便利だったのだと思います。
Webなら、治療院が今忙しいかどうかを気にする必要がありません。
「この時間に電話して大丈夫かな」
「施術中だったら悪いかな」
そんなことを考えなくても、自分の好きな時間に空き状況を見ることができます。
実際、Web予約を導入してから患者さんに、
「夜中でも空いている時間が分かるから、すごく助かる」
と言われたことが何度かあります。
これは導入する側からは、あまり考えていなかったメリットでした。
Web予約は治療院の受付業務を減らすだけではなく、患者さんが治療院へ気を遣わなくても予約できる仕組みだった。
だから定着したのだと思います。
それでも電話はなくならない
Web予約が中心になっても、電話がなくなったわけではありません。
LINEを使わない人。
LINEが好きではない人。
Web予約が苦手な人。
症状について直接確認してから予約したい人。
こうした方は今でも電話を使います。
ですから私は、電話を完全になくす必要はないと思っています。
大切なのは、電話でなければ困る人のために電話を残しながら、電話を使わなくてもいい人には別の方法を用意することです。
そして最近、Instagramから音声メッセージが来た
ところが、予約や問い合わせ方法の変化はまだ終わっていないようです。
最近、Instagramから音声メッセージで連絡してくる方が何人かいました。
これには本当に驚きました。
施術中だったので当然その場では対応できませんでしたが、あとでスマートフォンを見てみると、Instagramから音声で連絡が入っている。
「今はこんな方法で治療院へ連絡するのか」
正直、仰天しました。
電話しかなかった時代を知っている人間からすると、これはかなり大きな変化です。
電話から留守番電話へ。
留守番電話からLINEへ。
LINEからWeb予約へ。
そしてInstagramのDMや音声メッセージまで使われるようになった。
患者さんにとっては、「治療院へ電話する」という感覚そのものが少しずつ薄れているのかもしれません。
ひとり治療院は「電話を減らす」のではなく、入口を増やす
振り返ってみると、私は最初から電話を減らそうと思っていたわけではありません。
その時々で、患者さんが使いやすい方法を追加してきただけです。
結果として、電話対応が減りました。
この順番は重要だと思います。
「電話に出るのが面倒だからWeb予約にする」のではありません。
施術中の患者さんを何度も待たせたくない。
予約する患者さんにも余計な気を遣わせたくない。
その両方を考えていった結果、留守番電話、LINE、Web予約という選択肢が増えていきました。
そしてこれから先、InstagramのようなSNSからの問い合わせがもっと普通になるかもしれません。
さらにAIが受付を補助するようになれば、また予約の形は変わるでしょう。
電話を上手に受けることは、今でも大切です。
しかし、すべての電話に自分が出なければならない治療院を作る必要はありません。
電話をなくすのではなく、電話しかなかった時代から卒業する。
ひとり治療院にとっては、それくらいの考え方がちょうどいいのではないかと思っています。


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