治療院を長く続けていると、治療技術だけではなく、「患者さんが治療院をどうやって探すのか」も大きく変わってきたことを実感します。
私は30年以上、鍼灸・あん摩マッサージ指圧の仕事を続け、そのうち20年以上は自分でホームページやブログを運営してきました。
以前はSEOにもかなり力を入れていました。症状別のページを作り、検索される言葉を考え、順位が上がったり下がったりするのを見ながら修正する。アフィリエイトもやっていたので、この作業自体は魚釣りのようで、かなり面白かった時期もあります。
ところが最近は、症状別SEOを以前ほど追いかけなくなりました。
理由は「SEOが完全に使えなくなったから」ではありません。今でも検索から患者さんが来ることはあります。
ただ、20年以上ホームページを見てきて、集客の入口そのものが変わってきたと感じるからです。
30年前は、まず紙の情報が重要だった
私が治療院を始めた頃は、今よりも業界誌や専門誌など、紙の媒体の存在感がずっと大きかったように思います。
治療家同士の情報交換も、本や雑誌、勉強会、研究会などが中心でした。
ところが、その後インターネットが普及し、情報発信の中心が紙からホームページやブログへ移っていきました。
2000年代から2010年代前半くらいまでは、「まずホームページを作る」「ブログを書く」「GoogleやYahoo!で検索してもらう」という方法が、個人の治療院でもかなり重要だったと思います。
私自身もホームページを作り、ブログを書き、検索順位を見ながら何度も修正しました。
症状別SEOが非常に強かった時代
当時は、「腰痛」「肩こり」「頭痛」といった症状名だけでは競争が激しいので、さらに細かくページを作る方法が有効でした。
例えば患者さんから、
- 「朝起きた時だけ腰が痛い」
- 「夕方になると肩甲骨あたりが重くなる」
- 「耳の奥が痛い」
といった話を聞きます。
こうした言葉をカルテに残しておき、その人が実際に困っていることをテーマに記事を書く。
すると「腰痛」のような大きなキーワードでは勝てなくても、かなり具体的な検索から記事を見つけてもらえることがありました。
これは今振り返っても、SEOの本質の一つだったと思っています。
検索エンジンのために文章を書くというより、患者さんが実際に使っている言葉を拾い、その人の疑問に答える。
結果として、それが検索にも強い記事になっていました。
ところが、患者さんの探し方そのものが変わった
現在ももちろんGoogle検索は使われています。
しかし、昔のように検索結果を何ページも見て、いろいろな治療院のホームページをじっくり比較する人ばかりではなくなったように感じます。
特にスマートフォンでは、地域性の強い検索をするとGoogleマップと店舗情報がかなり目立つ位置に表示されます。
そこで重要になってきたのが、現在の「Googleビジネスプロフィール」です。
一般には、このGoogleマップを意識した対策を「MEO」と呼ぶことがあります。
以前のSEOでは、
- どんなキーワードを使うか
- どんな記事を書くか
- どこからリンクされているか
などをかなり意識しました。
一方、Googleのローカル検索では、検索内容との関連性だけでなく、検索している人との距離や、その治療院の知名度など複数の要素が関係します。
つまり、ホームページだけを一生懸命作ればよいという世界ではなくなっています。
SNSも無視できなくなった
さらにInstagram、X、Facebook、YouTube、TikTokなど、SNSから情報を探す人も増えました。
私自身はFacebookを長く使っていますが、若い人を中心に情報発信の場所はかなり分散したと感じています。
Instagramも10年ほど使っていました。
ただ、私は好きな写真を載せていただけで、治療院の情報発信という意味ではほとんど設計していませんでした。
今年になってAIにInstagramを見せて壁打ちしてみたところ、簡単に言えば「これでは治療院が何をしているのか分かりにくい」という評価でした。
そこで関係の薄い投稿を整理し、プロフィールや固定投稿などを使って、少し昔のホームページのように「ここを見れば治療院の概要が分かる」という形へ作り直しました。
Xも同様に整理しました。
20年以上ホームページを作ってきた人間から見ると、「また全部作り直すのか」と、少し呆然とする部分もあります。
コロナ禍を境に、さらに環境が変わった
特に大きな節目になったと感じるのが、新型コロナの時期です。
治療院も大変でしたが、患者さんの生活そのものが変わりました。
予約、買い物、仕事、情報収集など、さまざまなものがスマートフォン中心になりました。
治療院を探す方法も、その流れの中にあります。
以前ならホームページが情報の中心でしたが、現在はGoogleマップ、口コミ、SNS、ホームページなどを行き来しながら判断する人も少なくありません。
そして今度は「AIで探す」時代が始まった
さらに最近は、検索そのものにもAIが入ってきました。
従来は検索窓に数個のキーワードを入れていました。
現在は、
「新宿で仕事帰りに行けて、首肩こりを相談できる鍼灸院はありますか」
といった文章そのものをAIや検索サービスへ入力できるようになっています。
Google検索でもAIによる回答が表示されるようになりました。
これからは、「検索順位で何位になるか」だけではなく、AIが情報を整理した時に、どのように治療院が認識されるのかという問題も出てくるでしょう。
ただ、私はここまで来て、少し考え方を変えました。
SEO、MEO、その次はAI対策……いつまで追いかけるのか
SEO対策をやっていると、Googleの仕組みが変わるたびに対応する必要があります。
次にMEOが重要だと言われ、今度はAI検索への対応が必要だと言われる。
もちろん、最低限の対応は必要だと思います。
しかし、こうした仕組みは数年経つとまた変わります。
20年以上追いかけてきて思うのは、
「アルゴリズムを追いかけ続けることを治療院経営の中心にするのは、もういいかな」
ということです。
一生懸命対策しても、数年後には風景そのものが変わってしまいます。
もう一つ大きいのが、治療院の広告規制
鍼灸、あん摩、マッサージ、指圧の施術所には広告に関する規制があります。
2025年には厚生労働省から「あはき・柔整広告ガイドライン」も示され、インターネットやSNSを含めた情報発信について、以前より整理された形で考え方が示されるようになりました。
少し注意が必要なのは、通常の治療院ホームページがすべて法律上の「広告」になるわけではないということです。
一方で、SNS広告、リスティング広告、バナー広告などは条件によって広告として扱われます。
また、通常のウェブサイトについても、誇大な表現、効果を過度に強調する表現、利用者を誤認させるような情報などは避けるべきだという考え方が示されています。
新宿区にも施術所向けの資料があり、広告できる内容と広告できない内容が示されています。
そこで最近は、こうした国や自治体の資料をAIに読み込ませ、文章に問題がないか確認することもあります。
これはAIのかなり便利な使い方だと思っています。
SEO業者からの営業電話が多かった時代
10年ほど前を思い返すと、SEO業者からの営業電話も本当に多かった記憶があります。
「検索順位を上げませんか」
「ホームページを無料診断します」
といった電話です。
私はもともと自分でSEOをやっていたため、ほとんど依頼しませんでした。
最近はSEO営業よりも、別の種類の営業電話や、かなり怪しい電話のほうが気になるようになりました。
以前、「経済産業省の制度変更でキャッシュレス決済端末を変更する必要がある」という趣旨の電話がかかってきたことがあります。
しかも「無料で交換できるので、いつ調査に伺えばよいですか」と言われました。
どうもおかしい。
私は東京商工会議所にも加入しているので担当者に確認しましたが、「そのような話は聞いていない」とのことでした。
さらに関係機関へ確認すると、そのような制度変更はないことが分かりました。
結局、営業あるいは詐欺的な電話だった可能性が高いと判断しました。
カード決済会社の「代理店」を名乗る電話などもあります。
それ以来、私は0120、0800、海外からの電話など、知らない番号には基本的にその場では出ないようにしています。
本当に必要な連絡なら留守番電話に用件を残してもらう。
怪しい番号は一度検索して確認し、問題がありそうなら迷惑電話として登録する。
ホームページのSEOとは直接関係のない話に見えますが、これも20年間インターネットと治療院経営を続けてきて変わったことの一つです。
「検索で上位に出ること」以上に、「どの情報を信用するか」を考える必要がある時代になりました。
症状別SEOをやめて、これから何を書くのか
では、もう治療院の記事を書かないのかというと、そうではありません。
むしろ逆です。
以前のように、検索順位を上げることを第一目的にして「腰痛の記事を何本作ろう」「肩こりの記事を何本作ろう」と考えるのをやめようと思っています。
それよりも、実際の患者さんとの会話の中から出てきた疑問を書く。
自分が治療院を運営して失敗したことを書く。
ホームページ、LINE、予約システム、AI、電話対策など、実際に使って分かったことを書く。
そして分からないことは、AIと壁打ちしながら整理する。
今はそのほうが面白いと思っています。
結局、最後まで残るのは患者さんの言葉だと思う
SEOの方法は変わります。
Googleの検索画面も変わります。
SNSも変わります。
これからAI検索がさらに普及すれば、また情報の探し方は変わるでしょう。
しかし、20年以上ホームページを運営してきて、一つだけあまり変わっていないものがあります。
それは、患者さんが実際に困っていることです。
「腰痛」という言葉よりも、
「朝、布団から起き上がる時が一番つらい」
という言葉のほうが具体的です。
「肩こり」という言葉よりも、
「夕方になると首が重くなって仕事に集中できない」
という言葉のほうが、その人の生活が見えます。
検索エンジンのための記事を量産するよりも、こうした一人ひとりの言葉を拾い、その疑問に答える記事を書く。
結果として検索されるかもしれないし、SNSから読まれるかもしれない。将来はAIがその文章を見つけるかもしれません。
私は今、そちらのほうが長く残る記事になるのではないかと思っています。
症状別SEOをやめたのは、検索を諦めたからではありません。
検索順位を追いかけることよりも、実際の経験と言葉を残すことのほうが大切だと思うようになったからです。

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