
帰り際にふと手にしたのは、ニューヨーク大学名誉教授・ドロレス・クリーガー博士の『セラピューティック・タッチ』でした。
「手かざし」の方法や感覚づくりが体系的に紹介されていて、これまでに読んだどの本よりも分かりやすい内容でした。数年前、東京女子医大で看護師向けのワークショップが開かれていたと知り、「もう少し早く出会っていれば」と思わず悔やまれるほどです。
私がヒーリングの道に本格的に関わったのは、山田孝男先生との出会いがきっかけでした。初めて先生にお会いした頃、心の中では「ヒーリングに関わる仕事がしたい」と願っていましたが、環境的に難しく、夢は一度脇に置くことになりました。ところが、気功や太極拳を経て数年後、気がつけば自然にこの道に携わるようになっていたのです。人生というのは不思議なものですね。
山田先生からいただいた空海の言葉があります。
行行として円寂に至り、去去として原初に入る
三界は客舎の如し 一心はこれ本居なり
この言葉は、私にとってヒーリングに向き合うときの大切な道標になっています。
山梨のピラミッドハウスで行われたワークショップでは、シルバ・マインド・メソッドに再び触れる機会がありました。「マインドのレベル」に入る体験は、深く透明な意識の世界で、まさにクリーガー博士のいう「センタリング」に通じるものだったのではないかと思います。
実際、2年前にとんでもない環境でセラピューティック・タッチを行ったとき、この意識状態を体感しました。現実感を疑うほどの出来事で、思わず「ホッペタをつねる」ような瞬間でした。今振り返ると、あれは私にとっての原体験のひとつだったと感じます。
また、4年前のワークショップでは北岡泰典先生とも出会いました。仙人のような雰囲気をまとった方で、山田先生のワークショップで特別講演をされていました。以前からの知り合いかと思いきや、山田先生とはその場が初対面と伺って二度驚きました。こうした「不思議な縁」を感じさせる人物としては、菅沢和尚のことも思い出します。
振り返ると、「ヒーリング」というテーマは、私の人生をずっと貫いている流れなのかもしれません。出会いや体験の一つひとつが、点から線へ、そして線から面へと広がっていくように感じられます。