川崎市麻生区と町田市の一部では、毎年クリスマスシーズンになると住宅街が華やかなイルミネーションに彩られます。とくに向原や金程といった新しい住宅地では、年々飾り付けをするお宅が増え、その光景は地域の冬の風物詩でした。仕事帰りに車を走らせながら眺めるイルミネーションは、寒さを忘れるような温かさを感じさせてくれます。
麻生区といえば、洋菓子が美味しい地域としても知られています。どこのお店でいただいても外れがなく、とくに12月のクリスマスシーズンは華やかさが際立ちます。私はバタークリームのケーキが好きなのですが、12月はどのお店も予約でいっぱいで、なかなか手に入りません。それでも「やっぱりケーキはバタークリームだ」と思うのは、私だけではないはずです。
そして麻生区の冬の味覚といえば「禅寺丸柿」。柿生名物として知られるこの柿は小粒で種が多く、ゴマも混じった独特の食感を持ちます。カリカリとした歯ごたえは好き嫌いが分かれますが、どこか懐かしい昔ながらの柿の味わいです。北原白秋も長歌に詠んだほどの歴史ある柿で、その名は王禅寺の再建にまつわる逸話とも深く関わっています。
近隣では黒川あたりで露地物が売られ、最近では柿ワインの原料としても人気です。毎年販売される柿生の柿ワインはあっという間に売り切れてしまうほどの評判です。
寺の多い麻生区は、歴史の面影を今も色濃く残しています。かつて片平交差点近くの小高い丘には尼寺があり、近隣のお寺では数年に一度のご開帳も行われます。こうした地域の行事や情報は、当時「ライブリー麻生」というタウン誌に紹介されていて、私にとって身近な地域の魅力を知るきっかけにもなりました。
華やかなクリスマスの灯りと、素朴で奥深い禅寺丸柿の味。麻生区で過ごした日々の思い出は、今も年の瀬になると心に浮かんできます。