チラシはどう作り直してきたか
前回はチラシを1万枚配りながら商圏を探した話を書いた。今回はそのチラシ自体をどう作ってきたか、という話。
川崎時代は完全な自己流だった
治療院のチラシは長い間、自分で作ってきた。最初から反応率を測って改善するような立派なやり方をしていたわけではない。
川崎で開業した当初は出張専門で、チラシも先生のところの真似に近い自己流だった。ただ開業前から他院のチラシは集めていて、学生時代に手伝った指圧治療院でのチラシ配りの経験もあった。集めたチラシを何か月も眺めながら、自分ならどう作るかを考えていた。
最初から意外とうまくいった
川崎の最初のチラシは今見てもシンプルだった。情報を詰め込まず、伝えたいことだけを目立たせた。出張専門であること、内容、料金、連絡方法。電話番号は大きくした。それだけで、意外とうまく機能した。大きく作り直したのは記憶では2回程度で済んでいる。

13年後、新宿では通用しなかった
2003年、川崎から新宿へ移った。人が多いのだから何とかなるだろうと思っていたが、人が多いことと患者さんが来ることは別問題だった。土地勘もなく、どこにどんな人が住んでいるかも分からない。そこで改めてチラシの作り方を考え直すことになった。
「作って終わり」から「配って直す」へ
当時はインターネットが普及し始めていて、チラシ制作会社のサイトなどをよく読んだ。印象に残ったのは、一度作って終わりではなく、配った結果を見ながら作り直すという考え方だった。それまでは一枚の完成品を作る感覚が強かったが、この頃から「配る→反応を見る→直す→また配る」という流れに変わっていった。
パソコンの進化で試行錯誤しやすくなった
もう一つ大きかったのはパソコンの進化。以前は文字やイラストを切り貼りして原稿を作っていたが、新宿の頃にはソフトが使いやすくなり、文字の大きさや位置、タイトル、地図、料金の見せ方を自分で何度でも試せるようになった。印刷会社に修正を頼むたびに費用がかかるようでは試行錯誤は難しいが、パソコンの中で作る分には失敗してもかまわない。
手元に残るチラシは約10種類
「20回くらい作り直した」と記憶していたが、実際に手元に残っている原稿は10種類ほどだった。すべての試作を残していたわけではなく、ある程度形になったものや実際に使ったものだけが残っている。並べてみると、当時考えていたことがよく分かる。
最初は施術者側の言葉が多かった
初期の新宿のチラシは、「身体矯正マッサージ」のように施術方法を前面に出し、症状も多く並べていた。施術者としてはできることを説明したくなるが、受け取る側は技術の説明を読みたいわけではなく、自分に関係があるかどうかを知りたいだけだ。作り直すうちに、少しずつ患者さん側の言葉に置き換えるようになった。
詰め込みすぎず、優先順位をつける
自分で作ると経歴も施術方法も料金も全部入れたくなるが、読む側にとっては情報量が多いほど読みにくくなる。一番重要なことを大きく、それ以外は小さくする。全部を同じ重要度で載せない。これだけでチラシはかなり読みやすくなった。
クーポンという小さな工夫
チラシの専門書だけでなく、商売についての一般書も読んでいて、「点線でクーポンを囲む」というアイデアを知った。点線があると切り取れるように見え、目が止まりやすくなるという考え方で、実際に取り入れてみた。
作ったのは初回500円引きのクーポン。大きな値引きではないが、初めての治療院に入るきっかけにはなる。実際に持参して来院する人も何人かいた。
副次的な効果として、クーポンを持ってきたかどうかで「チラシを見て来た」と分かった。今で言えば、簡単なコンバージョントラッキングのような役割も果たしていた。

最初から大量印刷しない
チラシを作り直すようになると、最初から大量印刷することの問題も見えてくる。何万枚も刷った後にタイトルや電話番号を直したくなっても、在庫がある限り古いチラシを配り続けることになる。最初から修正の余地を残しておくほうがいい。
高価さと反応は比例しない
カラーで高級な紙を使えば反応が良くなるとは限らない。川崎でうまくいった最初のチラシも1色のシンプルなものだった。大切なのは、何のチラシか、誰に向けたものか、一番伝えたいことは何か、次に何をしてほしいかが短時間で分かること。豪華さより中身と見せ方のほうが重要だった。
AIで作れる時代でも、最初の設計は自分で
今はAIがあり、デザインの知識がなくても質問できるし、文章整理もレイアウト案も手伝ってもらえる。昔切り貼りしていた頃からすると大きな変化だ。それでも、誰に見てほしいか、何を一番伝えたいか、どんなチラシにしたいかは自分で考えたほうがいい。簡単なラフを書くだけでもよく、そのイメージをAIや業者に伝えて手伝ってもらう。最初の設計を完全に任せきりにしないことは、昔も今も変わらない。
川崎と新宿から分かったこと
川崎ではシンプルなチラシが早い段階でうまくいった。新宿では地域も競合も患者さんの動きも違い、改めて調べながら何度も作り直すことになった。手元に残る約10種類のチラシには、その過程がそのまま表れている。
作る→配る→反応を見る→また考える。この繰り返しはチラシに限らず、ホームページやSNS、AIを使った仕事でも同じだと感じている。最初から正解を作ろうとするより、まず出してみて、反応から直していくほうが結局早い。
次回:作る側と読む側でチラシの見方はまったく違う。読まれるチラシと捨てられるチラシの違いについて。


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