「臂臑(ひじゅ)」という肩の三角筋にあるツボがある。
普通は五十肩などに使われるが、目の疲れや声が出ないときに、深谷流ではよく出てくるツボの一つだ。
よく出てくるから効果あるとは、体験がないと使わない。
開業してすぐに、ここに鍼をしてくれと、作家の人に言われた。
何でも目の疲れに効くというので。
次回伺ったら、やっぱり臂臑に鍼をしてくれと言われた。
前回どうでしたか?と聞いたら首がダルくなった。
やっぱり上腕のツボがいいという。そこに鍼をして雀啄すると「あー目が気持ちいい」と唸っていた。ホントかなと思ったが受け入れた。
たまに条件が合うと症状が緩和される。
人の条件は、五感に頼るがトライ・アンド・エラーで精度を上げるしかない。
しかも最初は感覚が鈍なので皮膚や筋肉の変化を覚えておくことが出来ない。
最近は飛蚊症に臂臑(ひじゅ)のツボを使っている。
先日の戸ヶ崎先生のツボの講義を聞きながら「腰痛に三里」という話しを聞いて思い出したことがある。
友人が腰痛に大腿直筋の膝に近いところ(場所はアバウトでいい)と足三里、足首の解谿に刺鍼すると腰痛が緩和するという。しかも順番は、足首で改善しなければ足三里、それでも改善できなければ膝の大腿直筋のコリにぶすりと。テレビで中国人の鍼灸師が紹介されていたのを試したそうだ。イケる気がすると話していた。
理屈が分からないと嫌な性格なので数年、頭の隅において寝かしておいた。
今なら四型分類で説明できるが、当時は謎だった。何でもかんでも三里はないが、条件があれば(反応がある)あり。
20年くらい前は、ギックリ腰が、苦手で来ないように祈っていたことがある。
ある日逃げられない人からギックリ腰のオーダーがあった。
どうしようかなと触りながら考ええいたら、昔の鍼灸Osaka「特効穴特集」が浮かんできた。その対談には足首の中封穴が、ギックリ腰に効くと書いてあった。灸より鍼がいいと対談でも出てきたので中封穴に刺鍼してゆっくりひねってみた。
そうしたらその人が「腰を揉まれているように気持ちいい」と言いはじめた。
マジっすか?とは言えなかったので相槌打ちながら感じが変化するまでやってみたら成功した。
その後、腰痛の人が来たら中封穴を使うようになり、データが集まり始めると無効の人の条件も見えてきた。
鍼灸は、データ取るのが難しい。
毎日100人近く来院の多いところの先生が話していたが、最初に証を決めてツボを設定するという形で、ほんとに証でなくても効果があるのかブラシーボなのかデータ集めが出来るが、そんなところは、かなり少ないだろう。
トライ・アンド・エラーが感覚を磨いてくれるが、感覚の基準作りがけっこう厄介。
こういう鍼灸師や指圧師になりたいモデルになる先生を見つけられる人は幸い。
意外と鼻が利かないと出会いは側にいても分からないかもしれない。